小さき物の世界について
イギリスやドイツなどヨーロッパには、ドールハウスのように小さい物にこだわって芸術的な領域までミニチュア化にした物がありますが、日本においても自然界の大樹を限りなく小さくまとめ上げた物に「盆栽BONSAI」や、芥子雛(けしびな)と称して小ささと精巧さにこだわった雛人形があります。
この芥子雛は当時の江戸幕府が、大型化していく雛人形の大きさを厳しく取り締まったからと言う節もありますが、日本人独特の極小の美を好む趣味性が作り上げたものが、ミニチュア文化なのかもしれません。
この小さい物への限りのないこだわりは、「お雛様」の世界にも共通していて、清少納言の「枕草子」の中では「雛の調度、葵のいとちいさき。 なにもなにも、ちいさきものはみな美し 」とあり、日本人が如何に小さい物に愛情を注いでいたかがうかがえます。
江戸時代に入ると、雛祭りの行事が盛んに行われるようになり、徳川家のような大名家に限らず地方の大名や一般の庶民の間でも、雛祭りの行事が盛んに行われていました。日本各地の博物館や美術館には、当時の雛人形や5月人形などの品々が展示されています。
私の住む九州、佐賀の「鍋島家」にも、十二代目の禎子様が黒田家より嫁いできた際に持参された「銀製の雛道具一式」などは、高さが3~4cmのもので本物とまがうほどの精巧に作られた雛道具が数多く展示されています。
みかわ工房の「小さき物の世界」シリーズは、こうした小さいアンティークの雛家具・雛道具と、ミニサイズの雛人形を組み合わせが「愛おしさと新しさ」を感じさせてくれる事を確信し、私が毎年1年をかけて集めたアンティークの雛道具などの小箱と、これに合わせた2〜3cm大の内裏雛、三人官女、五人囃子、 屏風、油灯、橘を作る一方で、染色作家の清家さんが、これにマッチする布(袋、敷布、ふくさ等)を手書きや、手染めで作ったものとの組み合わせで構成されています。
最近は住まいもマンションやアパート住まいの方も多く、広い空間を使って雛人形を飾り付けることも少なく、転勤や海外赴任などが多いこともあり、小さくてコンパクトなものが好まれる傾向にあります。
この「小さき物の世界」シリーズのほとんどは、マンションの玄関先や靴箱の上、リビングのテーブルや本棚に置くことを考えて設計していますから移動も安心ですし、片付け後も一つの桐箱にすっぽり収まります。